お出かけ日記ANNEX

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5/3(月・祝) 松山・広島・うさぎ島 瀬戸内まんきつ海の旅3日目~その5~【R-18】

 不要不急の旅かどうかを検討するにあたり、広島第一劇場の閉館ということがありました。4月6日、中国地方に残る唯一のストリップ劇場「広島第一劇場」が、老朽化したビルの取り壊しに伴い、2021年5月20日を最後に営業を終えると記者会見で発表されたのです。
 劇場の存在は、広島にいた頃から知っていました。けれど、わざわざ行ったことはありません。ストリップというと、どうしてもドリフの加藤 茶のイメージが強く、なんとなくアングラで卑猥なものという先入観があったのです。
 しかし、この機会を逃せば二度と広島第一劇場での舞台を観ることはできなくなります。今回の旅を決行することを決めた理由の一つが、この広島第一劇場の閉館でした。
 広島第一劇場があるのは、夜の盛り場のはずれ。市内でも有名なお好み焼きやさんの並びですが、わざわざここまで来る人はよほどの物好きと言っていいでしょう。歴史を感じる外観は、昔のままです。

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「入れますか?」
 入り口のところのオッチャンに声をかけると、今、始まったところだと言います。入場料は6,000円と安くはありませんが、ここは気前良く払いましょう。なにしろ、これを逃したら二度と観ることはできないのですから。
 ストリップは服を脱ぐショーだということは知っています。それが、5人で2時間半の予定なのだそうです。途中で演者の入れ替わる時間もあるでしょうし、休憩を挟むのかもしれません。それでも、単純に計算してして1人あたり30分も服を脱ぐのにかかるわけがありません。
「一体どんなものなのか……」
 劇場の扉の向こうから、音楽が聴こえてきます。演奏会などでは途中入場はご法度ですが、ここはストリップ劇場。扉を開けて、入らせてもらうことにします。
 中には立見客がズラリ。予想外です。真っ赤なステージ上には半裸の女性がレ・ミゼラブルの曲に合わせて踊っていました。そして音楽に合わせて脱ぐ……、わけではないのです。加藤 茶がタブーのメロディに合わせて肌を露わにするような仕草は一切なく、脱ぐのは衣装のチェンジと同じような感覚なのです。
 踊りもいよいよ佳境になったとき、ステージの下手からテープが投げられました。
「ここが見せ場です!」
「ここで拍手をお願いします!」
といった絶妙のタイミングで、ステージの上にテープが弧を描きます。
 客席の壁側では、何人かの男性がタンバリンを叩いています。他の打楽器はなく、みんなタンバリンなのです。この人たちが、曲や踊り子さんの演技に合わせて盛り上げます。
「すごい! どこかのテーマパークの訓練されたヲタクと同じではないか!」
 ふと、ここが劇場であることを思い出しました。主役はもちろん、踊り子さんです。でも、音響で盛り上げる人がいて、照明で踊り子さんの魅力を引き出す人がいる。客席ではテープやタンバリンだけでなく、お客さん一人ひとりが拍手やおひねりで盛り上げる。これは、テーマパークのショーや演劇と一つも変わりません。
 踊り子さんも、ただ踊っているのではありません。恐らく、客から自分の体がどのように見えるかまで研究しているのでしょう。そこにいやらしさはなく、一つのショーとして完成されています。
 ストリップが卑猥なものだというのは、女性の裸が卑猥なものだと言っているのと同じでしょう。それは、女性に対してあまりにも失礼なことではないでしょうか。人間のありのままの姿が卑猥なわけがありません。それを卑猥だと思うようにしてしまったのは、文化や社会といったもののせいです。
 そういえば小学生の時。それが何年生であったか、何のための着替えであったのか覚えてはいません。恥ずかしがった子が男の子だったか、女の子だったかも記憶にないのですが、先生のひと言を今でも覚えています。
「隠そうとするから、余計に見ようとするんだよ」
 当時は「なんだそりゃ」と思ったのですが、今にして思うと、理にかなっています。こうやって女性の裸を目の前にしても、何かいやらしいものでなく、単純にショーとして美しいと思うのです。言うなれば、裸さえ舞台で踊るときの衣装の一つなのでしょう。それくらい、裸であることが当たり前として舞台で表現されているのです。
 広島のストリップ劇場が閉館するという話をすると、ストリップ劇場で演奏したことがあるというけいぴゃんは「ぜひ観た方がいい」と勧めてくれました。お陰で、自分の価値観が180度変わりました。少なくとも、今までストリップがエロだと思い込んでいた自分が間違っていたと反省させられたのです。
 この日は、踊り子さんの一人のデビュー○周年のお祝いでした。5人の踊り子さんのショーが終わった後にイベントをやるからと、クラッカーが配られ、プレゼントがあるからと、番号が書かれた紙も配られました。
「なるほど、だからこんなに人が入っていたのか」
 しかし、この時点で時間がかなり押していたらしく、イベントの進行は巻きが入ります。プレゼントも、くじ引きなんて時間のかかることはせず、その踊り子さんが好きな数字を言っていくというアバウトなもの。でも、それが嫌な雰囲気でなく進められるのは、踊り子さんがこれまでファンを大事にしてきたせいでしょう。だからこそ、選ばれた番号を持っていた人がみんな顔見知りだったのかもしれません。

 こういった舞台芸術が少しずつ失われていくことは寂しいことですが、どんな芸術も、そう簡単にゼロにはなりません。良いものがこれからも残っていく、そのことを強く願うのでした。

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