8/1(日) 初めてのお遍路 酷暑の四国一周の旅2日目~その1~
5:30頃、目が覚めました。ほんの2時間ほどの仮眠だからでしょうか。半分目が閉じたような状態でしたが、車の外に出ると、少しひんやりとした朝の空気で体がリセットされる気がします。
歯磨きをして顔を洗ってから、浜名湖を見に行くと、明るい日差しを浴びたせいか、目もちゃんと開くようになりました。
いつもと違う場所で朝の空気を吸うと、
「旅に出たんだなぁ」
と実感します。しばらく忘れていた感覚です。
さあ、2日目がスタートしました。目指すは淡路島。どこを通って行こうか、それは走りながら考えることにしましょう。そのまま名神や新名神でもいいし、時間は十分にあるので名阪国道まわりでも間に合うはずです。
「そうか。名阪国道なら寄り道ができるじゃないか」
淡路島の宿には、夕食の時間までに到着すればよいのです。急いで行かなければならない理由はないのですから、食事にお金をかけるかわりに高速代を節約するのもいいかもしれません。
伊勢湾岸道を走っていると、名古屋港の手前で雨が降ってきました。そういえば昨夜、深夜の国道を走っていると、遠くの空に浮かぶ雲の中に突然、妖しい光が走るのを何度も見かけました。今日はあまり、天気が良くないのかもしれないのかもしれません。
7:00、東名阪道の御在所SAに到着しました。ここで朝ごはんを食べるつもりですが、目当てのお店は8時開店。まだ時間があるので、先の計画を立てながら待つことにしましょう。コーヒーはSAのコンビニで買い、Wi-Fiはスターバックスのものを使わせていただくという、ここでも節約を心がけます。
せっかく名阪国道で行くのならば、奈良や飛鳥に寄り道するのも面白そうです。でも、季節は夏。歩いて観光するのはかなりの苦行であることが想像できます。
「車から降りてすぐのところがいいなぁ」
そう思いながら地図を見ていると、「伊賀一之宮IC」という文字が目に飛び込んできました。20代の頃から一の宮巡りを趣味にしている私は、恐らく伊賀国の一の宮にも行っているのではないかと思うのですが、全く記憶にありません。だったらちょうどいい。立ち寄り先を、敢国神社に決めました。
朝ごはんは、山本屋本店の味噌煮込みうどんに決めていました。朝8時から10時までの限定メニューというネギ味噌玉子雑炊も魅力的だったのですが、ここは初志貫徹。ちょっと硬めのうどんを、熱々の汁と一緒にいただきたいのです。
土鍋の蓋を取り皿にして、味噌煮込みうどんをいただきます。
「そういえば、夏に熱々のうどんっていうのもなぁ」
と思ったのですが、もう注文してしまったのですから仕方ありません。それに、夏でもホットコーヒーを頼む私なのですから、夏でも熱々のうどんは大歓迎なのです。
朝ごはんをしっかりいただいてから出発。亀山ICで高速を降りて、国道25号線の名阪国道を走ります。ほとんど高速道路と同じような道路ですが、無料というのが嬉しいところ。交通量も少し多めですが、渋滞するほどではないのですこぶる快適です。
伊賀一之宮ICで一般道に降りると、そこは地元の狭い道。一気に蝉の声が大きく聞こえてきたような気がします。そうそう、旅で走りたいのはこういった道です。バイパスや国道は走りやすいのですが、何ともつまらない。あたりの家から人の声が聞こえるような、畑や田んぼの匂いがしてくるような、そんな道こそ旅で走りたい道なのです。
駐車場に車を止めて、神社まで歩いてみますが、前にここへ来たという記憶がありません。もしかすると、来たつもりで実は初めてだったのかもしれません。でも、それでいいのです。旅というものは、誰かに強制されるものではないはずです。自分が納得する旅を楽しめれば、それでいいのです。
頭の上で蜂の羽音が聞こえました。私の嫌いな音の一つです。季節は真夏。彼らが活発に動き回る季節なので仕方がないのですが、この旅ではこの後何度もこの羽音に苦しめられることになります。
境内に入ると、青々とした茅の輪が置かれていて、ここでも夏を感じます。横には「八月一日 茅の輪神事」と書かれた緑の幟が立っています。今日はちょうど8月1日。
「ラッキー! 今日からじゃん」
しかし、茅の輪の入り口に三角のコーンが置かれていて、入れないようになっていました。
「『茅の輪』神事は八月一日午後四時より執行します。通り抜けはご遠慮下さい。」
こういう微妙なタイミングのずれは、何とも悔しいものです。
再び名阪国道に戻り、先へ進みます。でも、このまま天理まで行って、そのまま大阪へ向かうのもつまらない。それなら、寄り道をしながら向かいましょう。五月橋で県道4号線に入り、月ヶ瀬を抜けることにしました。トラックが多い名阪国道よりも、山間を抜ける県道の方が楽しいに違いありません。
「深い谷の風景が美しいなあ」
ハンドルを握りながら、そんなことを思うのですが、車だとついつい止まるのが億劫になり、先へ先へと進んでしまいます。その瞬間はとても満たされた気持ちになるのですが、後から思い出そうとしても、どこでどんな景色に出会ったのかを思い出すことができません。
そこで、来た道を少し戻ることにします。気に入った景色をもう一度見るために、きちんと味わうために、ちょっと車を停めて降りてみることにしました。
自分がその風景を見た時の感動を写すことはできないとわかっていても、カメラを向けてみます。そうすることで、ただ走るのでなく、日本を味わう旅になればと思うのです。
「これからも、意識して車を停めて降りてみることにしなくては……」
そう心に決めて、さらに先を目指すのでした。