お出かけ日記ANNEX

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8/3(火) 初めてのお遍路 酷暑の四国一周の旅4日目~その1~

 

 朝の静けさの中に佇む寺は、また格別です。鳥のさえずりと蝉の声だけが響く中、私だけがこの風景をひとり占めしている。寺の侘び寂びを心ゆくまで味わうことができるのは、宿坊ならではの体験です。


 朝食はパン。寺の朝食は和食だろうと勝手に思い込んでいたのですが、お遍路さんの朝は早い。朝食の準備の手間を考えれば、パンの方が時間を節約できそうです。

 7時過ぎに安楽寺を出発して、県道14号線、34号線、20号線、21号線と、カーナビに従って進んでいきます。なるほど、ちゃんと走りやすい道を選んで提案してくれるようです。けれども、広島いた頃は中国山地を抜ける狭い山道を走るのが大好きだった私には、広く走りやすい快適な道は少々物足りません。だから、この後の焼山寺への道が楽しみです。
 国道438号線を曲がると、いよいよそんな狭い山道に入りました。
「これだよ、これ! 待ってろー、焼山寺!」
 もう、ワクワクが止まりません(変態)。
 安楽寺から1時間ほどで12番焼山寺の駐車場に到着しました。我ながら、いいペースです。


 広い駐車場から山道を延々と歩きます。今まで上がってきた車道よりもよっぽど立派で、整備された歩道です。そんな山道を歩いていくと、立派な山門の前に出ました。こういった瞬間に、お遍路さんたちはそれまでの苦労が報われたと感じるのでしょう。


 ちなみに、ここの駐車料金は500円。しっかりと納経所で請求されました。
 来た道を戻って次の札所へ向かいます。順番通りなら次は13番ですが、ラジオでは午後からにわか雨の可能性があると言っていました。天気がいい午前中のうちに、そしてまだ体力があるうちに山の寺を巡るのがよいでしょう。だったら一気に飛ばして、次は20番鶴林寺を目指します。
 走りやすい国道438号線から県道33号線、16号線と繋いでいきます。途中の勝浦川に架かる潜水橋を眺めていると、「四国を走っているなあ」と実感します。最後は生名の集落から一気に細い道を駆け上がり、鶴林寺の駐車場に着きました。
 山の寺といっても、厳しいのはここへ登ってくるまでの道。駐車場からお寺までは、どうってことはありません。


 お詣りをして納経所へ行くと、涼しい風が吹いてきます。まるで外にエアコンがついているかのようです。
「涼しいですねえ」
 納経所の女性にそう声をかけると、
「下より2度くらいは低いですよ」
と教えてくれました。山の寺は、辛いことばかりではありません。
 鶴林寺から山の反対側に下りて、県道19号線へ。こちらもまた走りやすい道で、ホッとする気持ちが半分と残念な気持ちが半分。でも、その後の県道28号線に入ると、再び狭い道になりました。
「やった!」
と思ったのも束の間。すぐに前をゆっくりと走る軽トラに追いついてしまい、仕方なくそのままついていくことにします。
 さあ、次は今日のハイライト、21番太龍寺です。寺までは全長2,775mの西日本最長のロープウェイが通じているのですが、なるべく節約を心がける旅ですから、当然ロープウェイには乗りません。狭い切り返しができないカーブのある山道を進み、奥にある駐車場に車を停めて歩いて上がるつもりです。
 しばらく進むと、軽トラの前を茶色い何かが横切りました。
「シカでした!」
 まったく、どこまで水曜どうでしょうネタを踏襲するのでしょう。でも、鹿くらいの大きな動物と衝突すれば、こちらも無事では済まなかったでしょう。軽トラさん、ありがとう。


 そこからは、なかなか厳しい山道です。もう、林道レベルです。でも、山道大好きな私にはどうってことはありません。


 駐車場に着くと、さらに車が入れない道が続いていて、入り口には「寺まで1,000メートル」と書かれた看板が立てられていました。平地の1,000メートルと山道の1,000メートルはまったく違います。不動産やさんの「徒歩○分」は、分速80メートルで計算すると聞いたことがあります。1,000メートルであれば、徒歩13分といったところでしょうか。だったら、山道でそれにどこまで近づけられるか、挑戦してみましょう。
 登り始めてすぐ、ロープウェイに乗らなかったことを後悔します。しかし、ロープウェイの運賃は往復で2,600円。駐車場には、料金500円と書かれていましたから、ここだけで2,100円の節約。そう自分に言い聞かせてながら山道を登っていきます。
 歩いている途中、足元でガサガサと音がすると、途中では、だいたいトカゲが現れます。それも、けっこうな頻度です。


 一度だけ、トカゲだけでなく蛇も見かけました。頭が三角で、どうやらマムシのようでしたが、こちらに気づくと茂みに向かってするすると消えていってくれたので助かりました。
「やった! 仁王門まで来たぞ!」


 そう思ったのも束の間。すぐその先に、「寺まで200メートル」の看板が立っています。心が挫かれる瞬間ですが、ここでゴールとぬか喜びさせないだけ良心的かもしれません。


 すると、上から小学校高学年か中学生くらいの女の子が母親らしい女性と一緒に下りてきました。彼女はマスクをしていなかったからでしょう。私とすれ違う時に手で口を押さえながらですが、にこりと笑ってあいさつをしてくれました。なんだかそれだけで元気が出てくるのは、私がおじさんになった証拠かもしれません。
 結局、駐車場から本堂まで徒歩25分。なかなかいいペースで歩けたと思いつつ、お詣りに向かうのでした。