お出かけ日記ANNEX

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8/7(土) 初めてのお遍路 酷暑の四国一周の旅8日目~その3~

 44番大宝寺に行こうとすると、寺のすぐ手前の道が工事のために通行止めになっていました。こんなに山の中で工事通行止めだと、本当にこの先に行けるのだろうかと心配になりますが、指示されたう回路を通って、無事に44番大宝寺に到着しました。


 色鮮やかな緑に囲まれた美しい寺です。青い空の下、木の葉が輝いて見えます。手水舎では、冷たい水が豊富にあふれていました。
 境内には外国人男性と日本人女性のカップルがいました。女性は熱心にお詣りしているのに対して、男性はお詣りに興味があまりないようです。でも、寺そのものには興味があるようで、じっくりと建物を見てまわっていました。


 私がお詣りをしていると、後ろの石段のところから大きな音がしました。さっき、お堂のところで女性とすれ違ったので、
「もしかして、転落したか?」
と心配になり、あわてて石段のところへ行ってみると、女性は歩いて石段を下りていて、落ちていったのは、どうやら彼女の金剛杖だったようです。
「ああ。やっぱり弘法大師さんだ……」
 弘法大師はこうやってお遍路さんを救うこともあるのだと、その時の私は直感的にそう思ったのです。
 神仏の存在を感じたり信じたりすることは、いろいろな宗教に共通する部分でしょう。神仏が本当に存在するかどうかといったことは別として、そういう意識をもつと、身の回りの事象の捉えが変わってきます。私は仏教徒ではありませんが、そういった視点をもつことで、自分の視野が広がってくるのではないかと思ったのです。
 県道に戻って再び岩屋寺方面へ向かいます。この道はこのまま石鎚山へと続いているのです。天気は最高。行かない理由は見当たりません。
「決めた。石鎚へ行こう」
 でも、この道の途中には店が全然ありません。地図を見ると、この先におもごふるさとの駅というのがあり、「鮎やアメゴ 川の幸山の幸が味わえる」と書かれていました。山の手前の最後の店はおそらくここだろうと見当をつけて、まいたけごはんのおにぎりとお茶を買い求めると、あまり期待はしていなかったおにぎりがとてもおいしく、逆に、たっぷりの水で冷やされていたペットボトルのお茶が、あまり冷えていなかったのは期待外れでした。


 さらに進んでいくと、コンクリートでできた石鎚山の大きな鳥居が見えてきました。これをくぐれば、いよいよ石鎚スカイラインです。
「待ってろよ、石鎚スカイライン
 これからの山道を前にして、気持ちがワクワクしてきます。


 スカイラインといっても、最初の方はそれほど眺望はよくありません。しかし、狭いカーブを次々と抜けながらどんどんと高度を稼いでいくと、
「上の方はどうなっているのだろう」
と期待させてくれます。
 対向車線を、郵便屋さんのカブが下りてきました。日本全国どこにでも配達するのですから、石鎚山の上でも行くのは当然なのですが、こんな道をカブで走れるのは羨ましい限りです。
 切り立った山肌に、北の愛媛県側から雲が当たって、南の高知県側へは風だけが抜けていきます。ここは天気の境目。私は今、四国の空の境目を走っているのです。


 車を停めてそんな景色を眺めるのですが、ここでも大きな蜂の羽音があちこちから聞こえます。嫌だなあと思うのですが、周りの人はそれほど気にならないのか、平然としています。人によって違うのでしょうか。そういえば学校に通っていたころ、黒板を爪でひっかく音がダメな人と平気な人がいましたが、それと同じなのかもしれません。
 町道瓶ヶ森線にはUFOラインという愛称がついていました。
 尾根を縫って走る道から南を見ると、遠くに太平洋の海の青さが目に入ります。

 


「やはり来てよかった」
 こちらに来たせいで、46番以降の札所へ行くことはできなくなりましたが、寺巡りはまた次の機会にすればよいのです。松山空港から始めれば、46番浄瑠璃寺へ行くのは簡単です。でも、次に来るとき、余裕をもって石鎚に上がれるかどうかはわからないのです。旅は一期一会。どちらがよかったかはわかりませんが、常に自分が「よかった」と思える旅にしていくことが大切なのではないでしょうか。
 旧寒風山トンネルで愛媛県側へ抜けようと思い、
「もう少しで山道も終わるぞ」
と自分に言い聞かせながら下って行ったのですが、トンネルの手前には通行止めの案内。どうやら2020年9月の台風10号の影響で、トンネルの向こう側が崩落しているようなのです。日本列島の大きな4島の中で一番面積の小さな四国ではありますが、お遍路の地、四国よ。あなたは日本の島々の中で、決して最も小さなものではない。険しい山も海もあり、穏やかな山も海もある、変化に富んだ島なのです。
 さらに山道が追加され、いくら山道大好きな私でもお腹いっぱい。寒風山トンネルの南側で国道194号線に出たときには、山道から解放されてホッとしたのでした。
 全長5,432mの寒風山トンネルの向こう側の天気は雨。やはり空の境目であったようです。ワイパーを連続で作動させても前が見えにくいほどの本降りですが、それも山の近くだけ。山から離れていくにつれて振り方は弱まり、そのうちに晴れ間も覗くようになっていました。
「そういえば、今回の旅では雨に降られていないなぁ」
 傘をさしてお詣りした寺は一か所もありません。寺を巡ってきた効果なのかもしれません。それがつくづくありがたいなあと感じるでした。