お出かけ日記ANNEX

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9/12(日) 2回目のお遍路 秋のうどん県寺巡りの旅2日目~その1~

 レストイン多賀の仮眠室で目が覚めたのは、午前2時頃。まだ完全に目覚めていない体を湯船に沈め、気合いを入れます。ロッカーの鍵を返そうとすると、フロントの男性はマスクを外して休んでいたのか、私が行くと慌ててマスクを着用していました。6時間までの休憩時間内だったので、追加料金もなく、2:30頃、深夜の名神高速道路へと走りだします。
 昼間と違って、うんと交通量の少ない高速道路を進みます。大型トラックを1台、また1台と追い越していくのですが、周りが暗くて何も見えないせいか、なんだかゲームの中の世界のようで、いまひとつ現実感がありません。でも、この時間に誰かがトラックを運転して、日本中に荷物を届けていることで、私たちの日常生活は成り立っているのです。
 高槻JCTから新名神へ入ります。ここから先は、私がこの愛車を買った時はまだ開通していなかったので、カーナビは山の中の何もないところを突き進んでいきます。真新しいとても明るいトンネルの中は、減速しないようにという工夫なのでしょう。緑色の明かりが、私が進むのと同じ方向へ流れていきます。しかし、変化のない道は眠たくなるものです。たまらず、3:42、宝塚北SAに逃げ込みました。


 トイレの前に、全国を駆け巡るWILLER EXPRESSのバスが停まっていました。こんな時間にトイレに行くのは大変だろうと思いながら、あのバスの乗客たちがやっていることは私とまったく同じなのではないかと思うと、つい苦笑いをしてしまうのでした。
 さらに先に進むのですが、山陽道に入ると、再び睡魔が襲ってきました。暗闇が延々と続く中の道をひたすら進むという単調な作業をこなすだけの強靭な集中力など、今の私には持ち合わせていません。
 高速道路では、50kmごとにSA、10kmごとにPAが設置されていると聞きますが、次のPAまでの10kmさえ、とてつもなく遠い距離に思えてきます。
 4:30頃、どうにか白鳥PAに滑り込みました。車を停めてシートを倒し、「間に合った……」と思ったのも束の間、すぐに眠ってしまったようです。飲酒運転は自分の意志で防ぐことができますが、居眠り運転を防ぐには、自分の意志にも限界があります。眠気の解消のためには、やはり眠ってしまうのが一番効果的なのです。


 20分ほど眠っていたでしょうか。夢の中でも、私はPAで休憩をしていました。隣に止まった車の子どもたちがトイレに行きたいと大騒ぎする夢から覚めると、周りにはそんな車もなければ子どもたちもおらず、夜明け前の静けさの中に私の車だけが一台、停まっていたのでした。
 眠気はすっきりと解消され、PA内のコンビニエンスストアでコーヒーを買い、再び出発です。
 白鳥PAを出ると、少しずつ空が明るくなってきました。雲が多く、天気がいいとまでは言えませんが、まずまずといったところです。
 倉敷JCTから瀬戸中央道に入り、先月も渡った瀬戸大橋を目指します。
 6:05。瀬戸大橋の途中にある与島PAに立ち寄ります。展望広場に向かう道のところで、大きなキノコが生えているのに気づきました。こんなものがあれば、見つけた子どもが取ったり踏んだりしそうなものですが、こうして残っているということは、コロナ禍による外出自粛の影響で、この夏ここに来る子どもが少なかったということでしょうか。それとも、昔の子どもたちのように、最近の子どもたちはその辺のキノコを採って遊ぶなんていうことをしないのでしょうか。ともあれ、瀬戸大橋をバックにパチリ。いよいよ四国は目の前です。

 坂出北ICで降りて、県道33号線へ。最初に訪れたのは、78番郷照寺です。
7時前、山門前に着くと、ミニバンが1台停まっていました。山門はシャッターが閉まっていて、中には入れないようです。
「しまった。まだ早かったか」
 引き返して、先にうどん屋さんを探しに行こうとしたのですが、ギアをバックに入れたところで、後ろから軽トラックがやってくるのが見えました。これでは後ろに下がることができません。
「万事休す、か……」
と思っていると、軽トラックから運転手が降りてきて、「寺を開けるので通してほしい」と言うではありませんか。やった! 一番乗りだ!


 瀬戸大橋を望む絶景とうたわれる郷照寺の境内から海の方を見やると、白っぽい曇り空に溶け込むように瀬戸大橋が架かっているのがわかります。青空ならもっと気持ちがよかったはずですが、雨が降っていないだけでも御の字です。


 納経所へ向かうと、先ほどの軽トラックのおじさんがいました。私の車のナンバーを見ていたようで、
「東京からですか?」
と声を掛けられ、最後は、
「お気をつけて」
と送り出されました。
 特別なことはなに一つありません。地元の車ではない人に、お気をつけてと声を掛ける。ただ、それだけのこと。でも、それだけのことがありがたいと感じられるのは、夏のお遍路の旅で感じることができた旅の喜びの一つなのです。今回もひと寺ずつ、旅ができることの幸せを噛みしめながら巡っていくことにします。