お出かけ日記ANNEX

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9/13(月) 2回目のお遍路 秋のうどん県寺巡りの旅3日目~その1~

 私のように、動いていないと具合が悪い回遊魚型(?)の旅人の朝は早くに始まります。5時台には目を覚まして、6:00からの朝風呂を満喫してからチェックアウト。いつものビジネスホテルのお楽しみは朝食バイキングなのですが、ここ香川県はうどん県。朝から讃岐うどんを食べることにします。

 6:30過ぎにチェックアウトして、前回丸亀に来た時にゲストハウスのオヤジさんに薦められた「まごころ」といううどんやさんを目指すことにしました。ここは朝6時から年中無休で営業しているという、なんとも嬉しいお店なのです。

 いかにも港湾地区といった風景の中、殺風景な角地に店舗はありました。うどん工場に併設されている店舗ということで、製造の片手間に営業しているような小さな店舗かと思ったら大違い。体育館のような巨大な店舗は、サービスエリアかショッピングモールかと思うほど広さがあります。これなら、団体旅行で数台のバスを連ねて来ても入れそうです。

 レジでうどん玉を注文し、レジから少し離れたところにある釜で、自分で茹でることができるセルフの店。薬味も載せ放題ですし、かけ出汁ももちろん、セルフでタンクから注ぎます。

「そうか。だからあのオヤジさんはこちらを奨めたのか」

と、ようやく合点がいきました。ゲストハウスに泊まるような旅人なら、上品で美味しいうどんやさんよりも、地元ならではのこちらの方が気に入るに決まっています。あのオヤジさん、さすがです。

 お腹が空いていたので、かけうどん(中)を注文すると、うどん2玉でした。つまり、(小)の2倍です。これは嬉しい。

 かけうどんと一緒にとり天を注文したのですが、これの衣が硬いのなんの。口の中をケガするんじゃないかと思うような硬さです。しかし、それを出汁の中に入れると、不思議とちょうどよい柔らかさになりました。きっと、そこまで考えて揚げているのでしょう。これは、天ぷらとして食べるのでなく、天ぷらうどんとして食べるための天ぷらなのです。なんという配慮でしょう。恐るべし、うどん県といったところなのでした。

 さあ、今日も寺めぐりを始めましょう。まずは77番道隆寺から。いろいろな札所で弘法大師像はよく見かけるのですが、弘法大師にすがる衛門三郎像というのは初めて見ました。しかも、背中に名前が彫られていて、衛門三郎の話を知らない人でもわかるようになっています。

 境内では、地元の方でしょうか、中年の男性とその母親らしい女性が二人、朝から熱心にお詣りしていました。その土地の寺や神社を大切にするということを、この国の人々は昔からずっとしてきたはずです。しかし、私はそれにあまり触れることなく育ってきたように思います。というのも、私が子どもの頃に住んでいたのは、ベッドタウンと呼ばれる、高度経済成長期に開発された町。寺や神社は、身近なものではありませんでした。神輿も山車も、近所では見かけませんでしたし、秋祭りをやるような場所もありませんでした。

 今の日本で、少子高齢化が進むこの国で、古くからの日本の文化といったものはどれだけ継承されているのでしょう。文化とは、博物館に展示するようなものでなく、いつもすぐ身近にあるべきものだと思うのです。

 また、この寺には奈良時代に起源をもつ眼病平癒の「眼なおし薬師さま」がまつられています。子どもの頃からメガネだった私は帰りがけに、こちらの薬師さまにも手を合わせることにしました。宗教とか文化とか、そういった難しいことではなく、自分の気持ちとして、そう風にしようと思う。大切なことはそういうことだと思うのです。

 次の金倉寺に向かう途中、小学校の前を通り過ぎました。カレンダー通りの仕事をしている私にとって、たまたまイレギュラーで月曜日が休みになって子どもたちの通学風景に出くわすと、思わずドキッとしてしまいます。それが制服姿の中高生なら、「今日は部活かな」とも思えるのですが、ランドセル姿の小学生を見かけると、「今日は平日だよ」と言われているようで、なんだか仕事をサボって悪いことをしているような気持ちになるのです。

 76番金倉寺の駐車場に停めて寺へ向かうと、料金は本堂の奥にある売店のようなところで支払う仕組みになっていました。この売店には必ず行かなければいけないわけではないし、自分からひと声かけなければわからないでしょう。それでも正直に申告することにします。駐車料金だと思うと、毎回払うのは重荷に感じますが、お賽銭だと思えば気が楽です。

 納経所のおばちゃんと、どこから来たかといったことを話していると、

「今はえぇ。早よ回れる」

と、このコロナ禍でお遍路さんが少ないことを話してくれました。

「でも、今日、東京に帰るんです」

と伝えると、こんなに天気がよくてたくさん回れるのに……と残念がられました。さすがに、夕方近くまで寺を巡り、夜通し走って徹夜で明日の仕事に行くわけにはいきません。今日はほどほどでお遍路は終わりにして、次回の楽しみにとっておくことにします。

 境内では、太極拳をされている人たちがいるなど、のんびりとした空気が漂っています。公園のように、人々の暮らしの傍にある空間というところが素敵だなと思ったのでした。