お出かけ日記ANNEX

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3/22(日) 濃厚!大人の広島平和学習の旅 3日目~その3~【終】

 平和大通りを東に向かい、鶴見橋を渡ったところを左折。
「あぁ、KAJISANはここかぁ」
と、彼が呟きました。そういえば、広島の地図も渡さず、位置関係も説明せずに連れまわしていたので、どこをどのように歩いたか、きっとわからなかったことでしょう。
 多聞院のところから比治山に上がります。
「昨日は山の北側を見たけど、今日は南半分だよ」
と説明してから、2日間連続の比治山ツアーが始まったのです。


 まず最初は、放射能影響研究所(放影研)から。「検査すれども治療せず」と言われた原爆傷害調査委員会だった場所です。もっとも、ABCCという略称の方が有名かもしれません。
「しまった。ABCCについての事前学習、してこなかった」
 原爆被害について調べれば、どうしたって出てくるのがABCC。私は、大学を卒業して広島で就職し、初めて放影研のカマボコ型の建物を見たとき、
「あっ! ABCCだ!」
と、文献の中でしか知らなかった施設を目の前にして、「ここがあの……」と思ったものですが、知らなければ、何だか古い学校みたいだなと思うだけかもしれません。
 建物をぐるりと回り込み、陸軍墓地へ向かいます。
「あれ? こんなにきれいだったっけ?」
 以前はお寺のような入り口だった気がするのですが、どうやら昨年(2019年)、広島市による「平和の丘」計画の第1期工事によって改修されたようです。そうか。だから、昨日行ったムーアの広場も、見晴らしよく剪定されていたのでしょう。


 無数の墓標が並ぶ陸軍墓地を見ていると、戦争とは殺し合うことだという現実を突きつけられます。戦争に行くということは即ち、殺される可能性がある場所に行くということ。普段、誰かに命を狙われるような生活を送っていない私たちには、想像もつきません。
 平和とは何か。高校生の頃に読んだ『悪魔の辞典』という本には、“戦争と戦争のあいだのだましあいの期間”とあった気がします。19世紀から20世紀にかけて生きた悪魔の辞典の筆者、ビアスにとてて、それは間違いではなかったのかもしれません。では、21世紀に生きる私たちはどうでしょう。自分にとって平和とは何かを考えたとき、少なくとも、戦争と戦争の間ではないはずです。
 平和について考えるということは、自分や自分のまわりについて考えるということ。それが自分にとって、自分のまわりの人にとって、幸せなものであるよう、できることをしなければならない。今回の旅で、そんなことを思ったのでした。
 新幹線の時間にはちょっと早いのですが、広島駅まで送っていただきます。車中から源蔵が見えましたが、やはり今日も休みでした。ハイ、もちろん、平和学習の後の打ち上げのことを考えていたのです。
 3月いっぱいで閉館する駅ビルのASSEで一杯やろうかとも思ったのですが、ここぞというお店が見つからず。
「昨日の、バスセンターの源蔵まで行くかい?」
と提案し、駅前のバス乗り場へ向かったのでした。


 源蔵に着くと、昨日よりはお客さんが入っていてホッとしましたが、半分のお店は閉めていて、やはり新型コロナウイルスの影響の大きさを痛感します。
 彼のリクエストで、今日はいか刺、私ははまち刺をもらいます。追加の肴で魚の子煮をもらうと、熱燗が欲しくなって、たまらず注文。いやはや、ここは天国です。


「駅に戻る時間、考えておこう」
 そうは言うものの、考えるのは注文を控えることではなく、飲むピッチを上げること。さざえの煮付けとお銚子を追加してもらって、打ち止めとしました。


 あとは、広島駅に戻って新幹線に乗るだけ。しかし、ここバスセンターから広島駅まではちょっと離れています。16:06発の新幹線に乗るためには、15:30頃に出ればバスでも電車でもきっと間に合うはず。でも、道路状況によっては、どちらも遅れる可能性があります。
 しかし、時間に正確なルートがただ一つ、ありました。アストラムライン経由なら、渋滞の心配はありません。広島市内発の乗車券ですから、アストラムラインの運賃だけでよいのです。
 県庁前15:26発のアストラムラインで、2つ先の新白島へ。なんだかモダンな駅ができたなあと思いつつ、JRの高架をくぐって乗り換えます。これは少々面倒な造りですが、もともと駅がなかったところにずいぶん後になって作ったのですから、仕方ありません。


 ホームで回送電車を1本見送って、15:42発の列車で終点の広島へ。さすがは鉄道、定刻に到着して、新幹線には余裕で間に合いました。
 お弁当とお土産を買って17番ホームに上がると、のぞみ116号はすでに入線していました。広島始発だと、ホームで待たなくてもよいところが便利です。


 16:06、定刻に広島駅を発車。せんじがらを肴に、ビールで乾杯します。思えば、乾杯に始まり乾杯に終わる旅でした。飲んだくれの旅のように思われる広島平和学習の旅は、大人ならではの旅。しっかり飲んで、夜の新幹線で眠っているうちに東京に向かい、3日間の旅は終わったのでした。