お出かけ日記ANNEX

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3/20(金) 濃厚!大人の広島平和学習の旅 1日目~その4~

 江波から広島駅行きの電車に乗りながら、ふと、夜の原爆ドームのライトアップの話になりました。
「夜の原爆ドーム、見たことないんですよ」
 広島の人間にとっては、原爆ドームは365日24時間そこにあるもの。でも、観光客にとっては、自分が見た時、または写真などで見る姿しか知らなくて当然です。
 窓の外は、薄暗くなってきました。相生橋を渡るとき、ライトアップされたドームの姿が見られるのではないかと期待したのですが、残念、少し早かったようです。



 立町で降りて、今回の宿舎であるひろしま国際ホテルに向かいます。新幹線とセットで安く取れたのですが、まさかこんな街中のホテルに泊まることになろうとは。ともあれ、荷物を置いて、今宵のプランを考えましょう。


 今さら市内をぶらぶら歩くつもりはないし、酒を飲みに出かけるほど、お腹が減っているわけでもない。ならば、どうするか。
「よーし。風呂、行くぞー」
 すると、彼は二つ返事で賛成。早速、着替えの用意を始めた彼が、「あっ……」と声を上げました。どうしたのかと聞くと、下着以外の服を入れてきたつもりが、忘れてきたと言うのです。
 これは困りました。服にはまったく頓着しない私。彼がいつもどんな店で服を買っているか、皆目見当もつきません。仮にブランド名がわかったとしても、それを扱う店が広島のどこにあるかもわからない。もっと言えば、広島の若者たちは、一体どこで服を買うのかさえ知らないのです。
 私が困り果てていると、
ユニクロでもいいんスけど……」
と彼が言いました。なるほど、ユニクロなら確か、サンモールの中にあったはず。広島に住んでいた当時のまま、情報がアップデートされていない私は、八丁堀でなく、紙屋町サンモールのユニクロに彼を案内したのでした。
 風呂のアテは、薬研堀通りを下ったところにある音戸温泉。旧 天満屋ユニクロがあったことにこの時気づいていれば、通りすがりによることができたのですが、サンモールは反対方向。ですが、こういった時にもすぐに路線変更してしまうのが、ちいたろう軍団の旅。
「じゃあ、さっき言ってた夜のドームを見に行こう」
と、本通を抜けて元安橋へ。川の向こうに浮かび上がる原爆ドームを眺めてから、夜の平和記念公園へと入ります。


 お花見のシーズンか8月6日でもなければ、夜、ここへ来ることはありません。それはみんな同じらしく、ほとんど観光客の姿がない中を、平和の池沿いに歩き、慰霊碑越しに平和の灯と原爆ドームを見ます。8月6日の新聞のような構図で、彼も写真を撮っていました。


 平和記念資料館の前から赤バスに乗って、銀山町から薬研堀通りを歩きます。人通りが少ないのは、新型コロナウイルスのせいか、不景気のせいか、それとも、時代の流れなのか。繁華街が寂しいのを見ると、どうにも元気になれません。
 途中、カープ鳥の打順のメニューを見た彼は、
「この街のカープ愛は、半端ないっスねぇ」
と驚いていました。ただ、これだけに驚いていたわけでなく、薬研堀を歩きながら、カープのイメージカラーである赤を使った看板がいくつもあったことに気づいていた彼。旅人としての素質は十分にあると感じます。
 音戸温泉に近づくと、向かいにあったはずのボウル国際のビルがなくなり、更地になっていました。自分が知っている街の風景がなくなるのは、やはり寂しいもの。だからこそ、音戸温泉が昔のままその向かいで営業していて、相変わらず刺青のある人たちと一緒に湯に浸かる、そんな広島のいつもの風景がちゃんとそこにあったことが、何よりとても嬉しかったのです。


 ひとっ風呂浴びたら、冷たいビールが飲みたくなります。音戸温泉からもほど近い、竹屋町の赤とんぼに電話をすると、娘さんが出て、
「3月生まれの誕生日会をやっているけど、どうぞ」
と言ってもらいました。厚かましくも、向かいます。
 誕生日を迎えたのは、電話に出てくれた娘さんとその娘、つまり、お店のご主人のお孫さん。それから、当のご主人は還暦を迎えられたとのこと。そんなおめでたいところにお邪魔させていただきます。
 驚いたのは、一緒に行った彼が、上の娘さんの旦那さんと意気投合していたこと。
「あーっ、夏に来た彼とは違うのか!」
と、はじめは昨夏に一緒にライブをしに来たU氏と思い込んで話しかけていたそうなのですが、途中で別人と判明してからも話が盛り上がっていたのですから、彼のコミュニケーション力はなかなかのもの。いや、ここまでの一日を振り返っても、彼にとっては初めての場所で初めて会う人たちばかりなのに、そこにちゃんと馴染んでいます。
「すごいやつだ」
 次々とうまそうにビールを酌み交わす彼を見て、改めてそう思わずにはいられなかったのでした。