お出かけ日記ANNEX

お出かけ日記(https://ameblo.jp/porori-h/)の別館です。

8/3(火) 初めてのお遍路 酷暑の四国一周の旅4日目~その3~

 14番常楽寺の境内は、あちこちに地層がむき出しになっていました。自然の岩盤がむき出しになっていてひどく歩きにくいのですが、それを大切にしつつそのままにしているところに、本当の美しさとはどういうことかと考えさせられます。きれいに整えることの美しさもありますが、自然のままというのもまた、美しさに違いありません。


 納経所へ行くと、建物の入り口に猫が二匹、寝転がっていました。


「こう暑いと、猫もバテますよねぇ」
 納経所の女性と顔を見合わせて、苦笑いをしてしまいます。


 15番国分寺常楽寺から目と鼻の先にもかかわらず、全然雰囲気が違うのが面白いところです。


 国分寺とは、奈良時代の741年(天平13年)に聖武天皇の詔によって建立されたもの。弘法大師空海)が生まれる前からの歴史のある寺です。お遍路さんよりもずっと長い歴史を目の当たりにしながら、この国の人々がいかに古くからものを大切にしてきたかということが感じられます。
 16番観音寺は、再び町の中の寺。この町の中で、寺は人々の暮らしの中に存在し続けてきたのでしょう。それはヨーロッパの教会と同じようにコミュニティの中心であり、その地域の政治と深い繋がりがあったはずです。


 17番井戸寺の隣には八幡神社があったので、まずは神社にごあいさつ。神社用の御朱印帳も持って行ったのですが、どうやら御朱印はいただけないようでした。


 寺へ戻ろうとすると、境内らしいところを車が走り抜けていきます。仁王門のすぐ脇を道路が通っているのです。八十八ヶ所の札所というと、何か特別な場所のようにも思うのですが、地元の方々にとっては普通のお寺の一つに過ぎないのかもしれません。


 納経所でどら焼きをいただいたので、お昼ごはんを食べていないお腹をこれで満たそうとしたのですが、それは到底無理な話。そこからは、ついつい食べ物のことにばかりにしか頭が働かなくなります。
「いのたにさん、何時までだっけ?」
 徳島ラーメンの有名店、いのたには夜の営業をしておらず、寺巡りの途中に立ち寄れそうな場所でもなかったので、立ち寄り先の候補からは外していたのです。でも、ここが中途半端な時間までしか営業していなかったのは覚えています。だとすると、営業時間が17時までとか18時までというのはあり得る話です。
 国道192号線徳島駅へ向かっていたのを路線変更。一本裏の通りへ入ると、道路沿いの店舗はすぐに見つかりました。入り口にはまだ、営業中の看板が掲げられています。


「やった! 間に合ったぞ!」
 店に入ると、営業時間は17時までと書いてありました。残り20分ほど、ギリギリセーフです。
 厨房の中では見事な連携プレーで、あっという間にラーメンが出来上がり、運ばれてきました。


「あれ? 生卵は?」
 なんと、あまりに急いでいてトッピングを頼むのを忘れていたのです。スープをごくりと飲んでから、麺をすすります。うまい。次に来たときはぜひ、生卵ありで注文しなくては。貪欲になんでも吸収するのも悪くはないけれど、こうやって旅の楽しみを次に取っておくことも大切なことだと思うのです。


 今宵の宿HOSTEL PAQ徳島は、徳島駅のすぐ近く。どうにか辿り着いてレセプションに行き、提携している駐車場の場所を聞くと、1泊400円で駐車できるといいます。駅のすぐ近くなのに、なんて良心的なのでしょう。
 チェックインの時に、若い男性スタッフから、
「こういう宿は初めてですか?」
と聞かれました。ゲストハウスへはけっこう泊まっている方だと思うのですが、ここではおとなしく、
「何度かあります」
と答えておくことにします。初めてではないですし、何度か利用していることも間違いではありません。ユースホステルに初めて友だちと泊まったのが中学1年生のときですから、ドミトリー歴はそれなりに長いはずです。
 エレベーターに乗ると、宿泊者の特典として、駅近くの旅館のお風呂に500円で入れるという案内がありました。猛暑の中での寺巡り、ひと汗流してさっぱりしたいものです。
 駅近くの阿波の国 昴宿よしのさんはすぐに見つかりました。そして、その隣には居心地の良さそうな大衆割烹があります。これで風呂上がりのビールは約束されたも同然です。


 入ってすぐの受付に座るおばちゃんにチケットと500円を手渡すと、大浴場に案内されます。先客はなく、貸し切りです。熱めの湯がなんとも気持ちよく、汗も疲れも洗い流すことができました。長居をせず、さっさと次に行きます。


 見つけたお店は、安兵衛さん。風呂の隣に大衆割烹とは、なんと理想的な立地なのでしょう(意見には個人差があります)。まずは生ビールを注文。歩き疲れた後、風呂でしっかりと温まった体にすうっと染み込んでいきます。
 つまみは、さっぱりしたものが食べたいです。メニューに「さばキズシ」とあったので、どんなものかと聞いてみると、しめさばだとのこと。しめ加減がほどよく、こちらも疲れた体によく効きます。


 ビールも少なくなったので、おかわりのついでにとりたたきを注文すると、こちらも絶品です。旅先でいいお店に出会うと、それだけで幸せな気持ちになるのでした。


 コンビニでミネラルウォーターを買って宿に戻り、共用のラウンジスペースで旅のメモをまとめていると、ゲストハウスの若い女性スタッフに、
「水、買ってきちゃったんですか?!」
と言われました。なんと、ここでは冷蔵庫の中のミネラルウォーターが飲み放題だというのです。駐車場といいお風呂といい、さらにミネラルウォーターといい、このゲストハウスはサービス満点です。
「サッカー、一緒に観ませんか?」
 今日はスタッフが集まって、オリンピックのサッカー準決勝、日本対スペインの試合を観戦するのだと言います。ラウンジにいた私にも声をかけていただいたのです。あいにくスポーツ観戦はほとんどしないので、丁重にお断りしましたが、せっかくなので途中で様子を見に行ってみると、試合は間もなく前半が終わるというところ。4人の若者たちが日本チームを熱く応援をしていました。
「本当なら、こんな風にみんなで盛り上がっていたんだろうなあ」
 コロナ禍で開催されている東京オリンピック。いろいろなことが思うようにいかない今の世の中を歯がゆく思うのでした。