お出かけ日記ANNEX

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8/4(水) 初めてのお遍路 酷暑の四国一周の旅5日目~その2~

 廃校水族館を出ると、雨はほとんどやんでいました。これはチャンスタイム。先を急ぎましょう。


 巨大な青年大師像を見て室戸岬の突端を周り、海から24番最御崎寺までの坂道を一気に駆け上がります。駐車場に車を停めて、まずは岬が見える展望台を目指しました。さっきまでの雨は上がっているものの、雨のせいで石段が滑ります。雨の日に職場へ行く時、地下鉄の長いエスカレーターで滑ったことがある私にとっては、この靴が滑る感覚が恐怖でしかありません。

 最御崎寺へは、展望台から少し戻る形となります。


 納経所では、おじさんがオリンピックのスケートボード競技を観戦中。ぽつりと、
「この子ら、学校も行かんと、こんなことばかりしよるんかのぅ」
と言いますが、学校に行っているかどうかは別として、自分がやりたいことで世界のトップレベルにまでなるのがすごいと思います。学校に行ったからといって、何かで世界のトップレベルになれるわけではありません。要は、自分が何をやるかです。
 学校に行くだけで、何かができるわけではありません。私は教員養成の大学に行って幼稚園に就職しましたが、就職してすぐに大学で学んだことが役立つわけがありません。目の前の小さな子どもたちに振り回されるのが精一杯です。学校で経験を積むことは大切だけれど、それだけでは何の意味もない。学校での経験を自分なりに生かすことこそ大切なのだと思うのです。
 海に近い集落の郵便局に寄ってから、次の札所を目指すことにします。


 25番津照寺は、漁港の近くの寺のようです。駐車場の案内はあるのですが、港と共用の駐車場で、かなり離れているようです。それよりも、あたりの道路が駐車禁止ではなさそうなので、こちらに停めて歩くことにします。


 本堂へ続く長い石段では、何やら工事をしていました。若い男性……というより、高校生か中学生にも見える男の子が、工事の廃材らしいものを持って石段を降りていきます。クレーンで運ぶこともできそうにないので、人力だけが頼りです。彼は一体、今日は何往復するのでしょうか。


 漁業とともにある町らしく、境内には漁業殉職者霊塔なんていうのも建てられていました。下の港は室津港というらしく、木々の緑と海の青さがとても美しい静かな港。でも、船乗りたちが仕事をする海は、決して美しいだけではなく、厳しさや恐ろしさも併せもった海。人間の力の及ぶ場所ではありません。そういった人たちの努力に支えられて今日の私たちの暮らしがあるということも、忘れてはならないのです。


 海の近くの津照寺とは対照的に、次の26番金剛頂寺は山の上。延々と山道を上がって駐車場に着くと、大きな観光バスが停まっていました。お遍路さんのバスツアーがあるとは聞いていましたが、この旅で見かけたのは初めてです。
 よく見ると、バスについているのは広島ナンバー。休憩していた運転手さんに、懐かしくてつい、
「(広島)市内の会社ですか?」
と聞いてしまいました。


 金剛頂寺に着くと、大師堂の前に白装束の団体さんが集まっています。おそらく、あのバスのお客さんでしょう。先達さんのリードのもと、みんなで声を合わせて般若心経を唱えます。霊場会のポスターでは、心の中もしくは小声での読経を勧めていましたが、一生に一度かもしれないお遍路、それもお大師さまへの信仰をもって巡礼する方々にとっては、みんなで一緒に読経をすることも大切なのかもしれません。


 私はそこから離れて、まずは本堂にお詣りします。すると、そこに若い女性が一人でお詣りしていました。駐車場には他に車はなかったのですが、おしゃれな格好をしていて、とてもここまで歩いてきたとも思えない、不思議な雰囲気の女性です。
 大師堂へ行ってから納経所へ行くと、彼女もそこにいました。団体さんはとっくに、バスに戻る前にお手洗いに……とバラバラになっていたので、彼女があの団体の一員かどうかは最後までわからなかったのですが、私も団体旅行の時に集団で行動するのは苦手だったので、何となく仲間を見つけたような、不思議な気分になったのでした。
 ちなみに、ここも駐車料金は納経所で支払うシステム。200円、ちゃんと申告して払います。
 お昼はもうとっくに過ぎているので、お腹が空きました。でも、今日の旅館は夕食が豪華な方で頼んでいるので、ガッツリ食べるわけにはいきません。ハモのフルコースを食べる前、昼にたこ焼き屋さんのはしごをしてしまったこと苦い思い出がよみがえります。
 国道55号線を走っていると、道の駅 田野駅屋がありました。道の駅なら、地元のお惣菜なんかがありそうです。


 売り場を覗くと案の定、お寿司がいくつか残っていました。その中で、甘鯛の押し寿司をいただくことにします。レジで代金を支払うときに、若い女性の店員さんにしょう油がないかと聞いてみると、
お酢でしめてあるので、そのまま食べてください」
と言われました。車に戻って言われた通りに食べてみると、なるほど、言われた通りに酢が爽やかに効いています。すっきりさっぱりとしていて、夏にぴったりの味わいです。


「これは、寺巡りでお腹を空かせなければ」
 食べてしまったものは仕方がありません。次の寺は神峯寺。山の上にある寺であることは、地図を見て明らかです。
「歩く寺ならいいのにな」
 旅のはじめだったら絶対に思わなかったそんなことを考えながら、寺へ続く細い山道を登っていくのでした。