お出かけ日記ANNEX

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8/5(木) 初めてのお遍路 酷暑の四国一周の旅6日目~その1~

 7:30過ぎに宿を出て駐車場へ向かうと、道路を掃除しているおばちゃんたちに「おはようございます」と声をかけられました。地方に行くと、その町で出会った人とあいさつをするのは当たり前のことなのですが、東京だとなかなかしません。人とのつながりって特別なものではなく、ほんの小さなこういったことだと思うのです。
 ともあれ、いい気分で6日目もスタート。旅の日程も折り返しです。
 今日も国道55号線を走ります。天気は最高。
「高知の海はまっこと青いぜよ」
と、気分はもう坂本 龍馬です。


 和食の先から、無料の高知東部自動車道に入ります。対向車線はものすごい渋滞。数キロはつながっているでしょうか。地方なのに、事故があったわけでもないのにこの渋滞。通勤で走っている方は大変です。
 28番大日寺は、寺へ続く道の入り口に大型車が入れないようにしてありました。テレビで見たときはもっとギリギリで設置してあったのですが、やはりぶつける車もいたのでしょう。撤去した跡が見られます。
 境内に上がると、緑の中の寺。朝の空気の中、自分自身がリフレッシュされていくようです。砂利が敷き詰められた境内がまた清らかで、やはり寺は朝が気持ちいいなあと実感します。


 次の29番国分寺へ行くと、寺の前に札所の場所を表す石柱が立てられていました。どちらへ進めばよいか、何kmで着くかが彫られています。門前に立っているのでなんと書いてあるかと見てみると、「国分寺 3m」とのこと。そりゃあ、ここからなら迷いようがありません。


 境内の掃除をしていたおばちゃんに、「おはようございます」と声をかけます。観光地ならいざ知らず、なんの縁もない見ず知らずの寺にいきなりお邪魔をするのは気が引けますが、札所であれば話は別。お互いに、それがわかっています。お遍路というのは、旅の大義名分なのかもしれません。もちろん、来させていただいているという感謝の気持ちは大切です。


 納経所の横に、お接待の給茶器がありました。普段、どこかの施設で無料の給茶器を見ても、ありがたいという気持ちにはなりません。でも、こういったさりげない親切に対してありがたいと思えることこそ、お遍路の効果なのかもしれないと思うのです。


 次の札所へ行く途中、簡易郵便局を見かけました。貯金通帳に局名のゴム印をもらうのも趣味にしているので立ち寄ると、通帳を見て、
「室戸から来られたんですか?」
と驚かれました。同じ高知県内なのですが、すごく遠くから来たと思われたようです。
「昨日のことですよ。室戸は雨が降っていました」
と話すと、こちらではもう長いこと降っていないと言います。同じ県内でもずいぶんと違うようです。


 高知道とつかず離れず走りながら、次の30番善楽寺へ向かいます。お寺は土佐国一の宮土佐神社の目の前。すぐにでも神社に行きたいところですが、まずは寺のお詣りを先に済ませて、神社へと向かいます。


 土佐神社の立派な社殿は、1570年に長宗我部 元親によって再興造営されたものだと書かれた看板が立てられていました。今からざっと450年前。石造りのヨーロッパの建造物と比べて、日本の木造建築は耐久性で劣るのだろうと勝手に思っていましたが、そうではないようです。そういえば、世界遺産法隆寺などは1300年以上の歴史があるのですから、寿命が短いとは言えません。でも、災害に対して弱いのは確実です。


 拝殿前に志那祢の森めぐりの案内看板があり、「ご朱印をご希望の方は ご散策前に社務所へお預け下さい」と書かれています。ちょうどいい、案内通りに御朱印帳を預けて森へ入ってみることにしました。


 歩き出してすぐに、
「痛っ!」
と、左のふくらはぎに痛みが走りました。虫に刺されたのでしょうか? すぐに見てみましたが、足には何もいません。ただ、赤い小さな点が1つ見えたので、蛇ではなさそうです。神社よりも先に寺へ行ったのをよく思わなれなかったのでしょうか。ともあれ、しばらく様子をみることにします。
 刺されたであろうところは、チクチクして時々痛みが走るのですが、それ以上悪くなりそうではありません。もし悪化したときには、病院行きも覚悟します。ここはもう高知市です。大きな町ですから、いざとなればどうにかなるだろうと考えて、次の札所へ進むことにします。
 31番竹林寺へは、市内の新しい道を抜けます。すこぶるきれいな道を快適に走っていると、そんな道から逸れて、カーナビが国分川沿いの道を提案してきました。整備されているのは先ほどの道。でも、土手をいくような素朴な道の方が私は好きなのです。
 小さな山の上にある31番竹林寺の入り口は、まるで最近の美術館のようです。


「本当にここはお寺なのか?」
 それでも、お堂の前には先客のお遍路さんがお詣りをしていました。
 境内には善財童子の像。この像が、なんとなく知人のお嬢さんに似ている気がして、善財童子は確か少年のはずだったのに、勝手に女の子のような気がしてしまうのでした。


 竹林寺の門前にある竹崎商店でお昼ごはんにします。食べられるときに食べておかないと食いっぱぐれることは、今回の旅でも経験済みです。


 月見うどんを注文。はやっているようにも見えず、床には犬が眠たそうに寝そべっています。あまり期待していなかったにもかかわらず、出汁がとてもうまい。こういった意外な出会いがまた、旅の食事の楽しみなのです。


 次の32番禅師峰寺も、小さな山の上の寺。狭い路地のような道を上がっていくと、自転車に乗った小学生の男の子に道を譲られました。


「うわあ、すごい地層だ」


 某公共放送のマニアックなお散歩番組ではありませんが、むき出しの見事な地層に思わず目がいきます。こんな地層ができるということは、遠い昔、ここは海底であったことの証拠です。それが隆起して、小高い山になっている。南海トラフに面しているこのあたりは、何度となく大地震に見舞われているはずです。そしてその度に、大きく地面が動いてきたはずです。地球の長い歴史からすれば、自分の一生なんてほんの一瞬でしかないのですが、そんな大きな時の流れを感じられるのは素直に嬉しいと思うのでした。