お出かけ日記ANNEX

お出かけ日記(https://ameblo.jp/porori-h/)の別館です。

9/12(日) 2回目のお遍路 秋のうどん県寺巡りの旅2日目~その3~

 四国八十八ヶ所霊場のうち、関所とされる札所が4か所あります。そのうちの一つが、66番雲辺寺です。

 国道32号線の長いトンネルを抜けると、徳島県に入ります。雲辺寺讃岐国の札所ですが、所在地でいうと徳島県になるのです。県道6号線の山道を駆け上ると、久し振りに四国らしさが感じられます。

 ここは、寺までのロープウェイが通じているほどの難所の一つなのですが、同じくロープウェイが通じている21番太龍寺と同様に、山道を登っても行くことができます。ロープウェイの運賃は、大人往復2,200円。こちらも太龍寺と同様、なかなかのお値段です。

 先ほどから降り出した雨は、寺へ続く細い道を登っていっても、止む気配はありません。

「いよいよ、傘を差してのお詣りか……」

 8月のお遍路旅では、一度も傘を差さずに回ることができましたが、この天気では仕方がありません。傘を差してのお遍路を覚悟することにします。

 駐車場に車を停めると、まさに雲辺寺、山のへりに雲がかかっているのが見えます。雲がすぐそこにかかっていて、手が届きそうです。こういった天気のときに来ることができたのは、むしろラッキーだったかもしれません。

 雨が降っていないわけではありませんが、傘を差すほどではありません。念のため、傘を持って寺へと向かうことにします。

 歩いていくと、道の途中に小屋が立っていました。そこは、協力費徴収所。ここを通るには、補修協力費を払うしかありません。言われた通り、500円を納めると、お箸をいただきました。

 さらに進んで立派な仁王門をくぐり、真新しい石段を上がっていくと、大師堂の前に出ました。お堂の前には、マニ車という、お経が彫られた石の筒がありました。

マニ車といえば、現金輸送車だよなぁ……」

 貨物列車の型式をついつい思い浮かべてしまうのは、子どもの頃、鉄道に興味をもっていたせいでしょう。

 実際に回してみると、石のマニ車はずいぶんと重たく感じました。回すことで、お経を一巻唱えるのと同じ功徳が得られるというのですから、簡単に回ってしまっては有難みがありません。

 お詣りをしているうちに、少しだけ雨が顔に当たるようになりましたが、まだ傘のお世話になるほどではなありません。いや、傘を差してもよかったのかもしれませんが、なんだか負けを認めたような気がしたので、そのまま駐車場まで傘を差さずに戻ったのでした。

 次の67番大興寺へ向かうために山道を下っていくと、分かれ道がありました。片方は、来るときに上ってきた道。もう片方は、まだ行ったことのない道。それなら迷わず、通っていない道を選ぶ、それが私のやり方です。

 選んだ道を進んでいくと、この道がなかなかのすごい道。歩道というには広く、車道というには狭いといった道なのです。まるで、公園の中の通路といった感じです。幸運にも、反対側から来る車はありませんでしたが、対向車が来たらどうしようかと常に考えながら走るのが四国の道なのです。

 県境の尾根をなぞるように走る道を抜けると、県道8号線に出ました。センターラインはないものの、対向車とすれ違える道だとペースも上がります。これも、四国の道。苦しい道ばかりでなく、走って楽しい道もたくさんあるのです。

 11:36、大興寺に到着。仁王門の向かいには、お地蔵さまでしょうか。田んぼのそばに、仏さまが立っていて、いかにも日本の原風景といった風情です。

 苔むした石段を上る途中にあるカヤとクスは、弘法大師のお手植えだと伝えられているそうです。

 しかし、この弘法大師という方のお手植えの木々や、一夜にしてお堂を建立したという話があちこちにあるのはおもしろいところ。本当かどうかというよりも、書物もないような古い時代の人がその伝説を大切にし、後世の人々にも弘法大師への尊崇の念を受け継いできたことはすごいことだと思うのです。

 本堂に向かうと、私の前に参拝していたご婦人が、「熱いっ!」と叫びました。どうやら、線香に手が近づいたか、当たったかしたようです。ご夫婦らしく、そのままお二人でその場を離れたので、大丈夫だとは思うのですが、私も、線香を香炉に立てるとき、いつも火傷をしないかとドキドキするのでした。

 そろそろお昼も近いので、次の札所である観音寺そばにあるうどんやさんに行くことにします。寺の手前に柳川製麺所というところがあるらしいことは調べてあったので行ってみると、店の周りは古い街並みで、細い道が入り組んでいます。こういったとき、軽自動車でよかったと思うのです。

 柳川製麺所は、店構えだけでなく店の中もレトロで、いかにも昔の食堂といった雰囲気です。中に入ると、狭い店内のテーブルで家族連れがうどんをすすっています。もうこの時点で、この店が気に入ってしまいました。

 さすがは製麺所。店の奥には作業場のようなものが見えます。そこからそのまま麺が運ばれてきて、厨房で茹でられたものがすぐに提供される。うどん好きにはたまりません。

 かけうどんを注文すると、先ほどの山内うどんと同じく、塩味よりもうま味や甘みといったものを感じる出汁が素晴らしい。細めのうどんは、のどごしが最高で、一杯では物足りなく感じるほど。特別なところは何ひとつないのに、そのバランスは店によって違います。それが店の個性であり、うどん県の魅力なのだと思うのでした。